この作品は池井戸潤の原作の小説を映画化しています。
池井戸先生は元銀行に勤められていたこともあり、銀行関連の作品も多いです。
そして主人公がどんなにピンチを迎えても、最後逆転する話が多く、スカッとするので私の好きな作家のひとりです。
今日はその中で「空飛ぶタイヤ」を紹介します。
三菱自動車(三菱ふそうトラック)のリコール隠し
2002年1月に横浜で大型トレーラーからタイヤが外れ歩行中の母子3人が死傷する事件がありました。
三菱自動車といえば、1992年ごろから車輪をつなぐハブと言われる部品の構造上の欠陥を把握していたにもかかわらず、リコールを隠蔽し、自己原因を運送会社の整備不良として責任を擦り付けていました。
2004年に当時の経営陣が逮捕されました。
そして三菱自動車は世間の信用を失い大きなダメージを受けました。
これはその三菱自動車のリコール隠しをモデルにした物語です。
リコール隠しによる企業の責任転嫁
主に自動車産業で多いのですが、自動車の不具合を知りながら、企業のイメージダウンを恐れて、国土交通省に虚偽、あるいは届け出を行わず、ヤミ改修をおこなうことです。
具体的には、今回の話は赤松運送という中小企業が中心ですが、荷物の運送中タイヤが外れ、買い物帰りの母子を襲い、母親が即死という痛ましい事故が発生します。
使用したトレーラーはホープ自動車の車ですが、原因はハブの故障ということで、本当は構造上の問題ですが、ホープの独自調査により原因は赤松運送の整備不良ということにすり替えられてしまいます。
この物語は、小さな運送会社の社長(長瀬智也)とリコール隠しをする巨大会社のホープ自動車との正義をかけた戦いです。
母子を襲うトレーラーの事故
事件は母子の買い物の帰り道で起こります。
1台のトレーラーから左前方のタイヤが外れ、母子に直撃します。
母親は即死、子供はかすり傷でした。
赤松運送の社長(長瀬智也)は2代目の社長で、父親の急逝のため、その後を継ぎました。
赤松社長はその日から事故の対応に追われます。
まず遺族への謝罪と原因究明です。
遺族からは人殺し扱いされ、弔問を拒否されます。
そして警察の事情聴取では、赤松運送の整備不良とされてしまいます。
すなわち全面的に赤松運送の責任ということになりました。
赤松社長は、整備担当をした門田を一旦クビにしましたが、整備記録をみると、必要以上に細かく整備点検されていて、整備不良と言われる個所はどこも見当たりませんでした。
赤松は門田に謝罪し、会社に戻ってきてもらいました。
そんな時、一番の得意先である相模マシナリーから契約を打ち切る連絡がありました。
理由は、整備不良を起こすような会社とは取引できないとのことでした。
しかし赤松は原因は整備不良ではないと取引の継続を申しでますが、受け付けられません。
今までなんとか赤字を出さなかった赤松運送ですがこれで一気に経営が苦しくなります。
売り上げは一気に減り、来月は3000万ショートする見込みになりました。
更に追い打ちをかけるように、銀行からは追加融資の拒否、そして今までの融資も返すように赤松に迫ります。
その上、遺族からは裁判を起こし、損害賠償を請求されます。
これで一気に赤松運送は窮地にたたされることとなりました。
一方、赤松は事故の真実を明らかにするため、ホープ自動車にハブを返すように依頼します。
しかし、ホープ自動車はそれを拒否します。
赤松は、ホープ自動車の販売部責任者、沢田に会おうと電話攻勢をしますが、クレーマーと認識されて応じてくれません。
また赤松は社員から、群馬の同業会社も同じような事故に見舞われたことを聞かされ、そこの社長に状況の確認で訪れます。
結局その会社もホープ自動車の車を使用し、事故後の調査では整備不良と結論付けられます。
そして群馬の社長からは、整備不良と言われながら逮捕まで至っていない現実と、ホープ自動車から事故車両を見にも来ない現状を見て、明らかに隠蔽ではないかと投げかけます。
そこから赤松のホープ自動車への疑念が、確信に変わりました。
大企業ならではの隠蔽体質
そんな最中、ホープ自動車の品質保証部の村井から沢田に赤松運送からのクレームがないか訪ねてきます。
沢田は落ち着きがない室井の態度から、会社で何か隠している疑念を持ちました。
そして同僚から、赤松運送と同じような事故が、群馬でも起きていたことを聞きました。
そしてその時の調査結果は、その運送会社の整備不良とされましたが、実際はタイヤの構造の問題で、欠陥が元々あったことを、幹部含めた通称T会議の中で隠蔽していたことが解りました。
沢田は赤松はクレーマーではないことを認識し、面会することを決意し実現しました。
沢田は赤圧に謝罪し、お詫びに1億円を提示し、ハブを返却できない代わりに示談にしようとしました。
しかし、赤松はこれを拒否しました。
この1億円を受けとれば、当面の運転資金になりましたが、赤松は到底受け取れることができませんでした。
その理由は遺族の想いです。遺族からは、人を殺しておいて、自分たちは容疑を否認してるという現状を見て、人間性まで疑われていたからです。
ここから赤松はたった一人で大企業に立ち向かうこととなります。
隠蔽体質の発覚 結局母親を殺したのはだれだ!
沢田は赤松に謝罪し、ハブを何とか赤松に返そうと試みたために、部署から外され左遷されます。
一方、赤松はマスコミを使い、ホープのリコール隠しを公に出そうとしましたが、手を回されて記事にはなりませんでした。
記者からは幹部から圧力がかかってしまった経緯を謝罪し、そのお詫びに今までホープ自動車で事故に見舞われ隠蔽された会社のリストを提示しました。
赤松はそのリストの会社を片っ端から訪れて、リコール隠しを暴くことを要請しすが、ホープ自動車を恐れて誰も協力してくれません。
しかし、その中でもある運送会社の社長から、リストには無いが、赤松のように協力を要請してきた会社があったと教えられます。
それが富山ロジスティクスという会社でした。
赤松は富山まで訪れ、整備担当者との面会で、ホープ自動車の事故の報告が、やはり整備不良と言われましたが、その車は新車でわずか300kgしか走行がないということで、明らかに整備不良はありえません。
そして富山ロジティクスの社長が元ホープ自動車の社員であり左遷されたのですが、その時のリコール隠しのための国土交通省への虚偽の報告書を、コピーして持っていました。
赤松はその資料を受け取り、はじめに家宅捜査を受けた警察に引き渡しました。
一方、ホープ自動車の沢田は、同じく左遷された同僚から古いパソコンを受け取りました。
それは以前T会議で使っていたパソコンであり、古くなって廃棄処分する予定でしたが、偶然1台残っていました。
その中には、T会議でのリコール隠しの工作などの資料が入っていました。
そしてついに警察は動き出し、リコール隠しの黒幕だった狩野常務の取り調べをして、警察からは富山ロジティクスの資料とホープ自動車の社内パソコンの中のT会議の議事録を見せて「母親を殺したのはあんただ」と狩野常務に痛切な言葉を浴びせて逮捕しました。
これでホープ自動車のリコール隠しの全貌が明らかになり、ホープ自動車は社会的信用を失墜することになりました。
そして逆に赤松運送は、信用を取り戻し、経営破綻を免れました。
不正と企業の社会的責任
企業の不正は、今でこそコンプライアンスが厳しくなり、そのような不正をチェックするシステムができあがっていると思っていましたが、未だに不正が発覚して信用を失っている企業は後を絶ちません。
最近では中部電力の浜岡原発の再稼働審査では、不適切なデータが使用されたようです。
もし東日本大震災規模の地震があって故障でもしたら、また同じことを繰り返したかと思うと、本当に背筋が寒くなります。
日本の企業には、利益を追求することはもちろん大事ではありますが、人々の命を守ることが社会的使命であることを忘れずに、社会に貢献していただきたいものですね。
今日はここまでです、 ではまた。


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