「廃用身」Aケアが現在の医療では受け入れられない理由は? 患者にとって本当のケアとは?

ヒューマンドラマ

この映画は久坂羊の原作であり、同名の小説を映画化したものです。

映画の舞台になったのはデイケアの「異人坂クリニック」であり、院長で外科の漆原糾(染谷将太)が手足が麻痺した患者に、身も心も軽くなるからという理由で切断することを勧めます。

そして体重が軽くなるので、家族の負担も軽くなるからとも啓蒙していました

しかし患者にとって切断することは患者にとってメリットにはなりません。

その理由を紹介したいと思います。

廃用の手足を切断することのデメリット

高齢の患者の手足を切断するということは、高齢者の体にとってとても負担がかかります。

まず切断した手足の断面に激しい痛みが生じます。

これを断端痛といいますが、切断個所の痛みは高齢者には応えますよね。

また存在しない手足が痛む幻肢通にも悩まされます。

更に切断した反対側の筋力も低下しやすくなり、筋力強化するためのリハビリも必要になります。

高齢者は、ただでさえ筋力が低下傾向にあるのに、更につらいリハビリをしなければならなくなるのは高齢者にとって耐えがたいものではないでしょうか。

また心肺機能の低下もおこるので、体力のない高齢者では命の危険にさらされる可能性も考えられます。

つまり、高齢者が脳梗塞などで手足が麻痺したからと言って切断に走るのは、逆に死へのリスクが高まることがあっても、メリットになることはないと考えています。

そして麻痺した手足が痛むから切断というのは、現在の日本の保険診療では認められていません。

映画ではそのあたりが触れていませんでした。

では切断するメリットがある治療はなんでしょうか?

医療で切断するメリットがある治療とは?

患者の手足を切断すること、は患者の体にとって大きな負担になることは説明しました。

しかし、切断しなければならないケースもあります。

例えば、感染症のケースがあります。

麻痺した足が感染して壊死をおこした場合はそのままにしておけば壊死が広がるので、切断はやむなしと思われます。

また、糖尿病もそうですが、足病変を起こした場合には、これも壊死が広がるため切断します。

このように切断しなければ死に直結するならば致し方ないのですが、麻痺だからといって切断することは医療的に正しい判断とはいえないのではないでしょうか?

廃用の手足を切断するという漆原医師の意見に同調する違和感

この「異人坂クリニック」でも、患者に対しての治療方針を決定するためのカンファレンスが行われていました。

メンバーは漆原院長を筆頭に、看護師、介護福祉士、PT(理学療法士)などがいましたが、ほとんどが漆原医師の意見、すなわち患者の麻痺した手足の切断することに同調していきます。

しかし、看護師の内野(中井友望)だけは強い違和感を持っていて、それを院長に打診しますが、相手にされませんでした。

後に内野はマスコミにリークします。

結局、まともな感覚をもっていたのがこの看護師だけで、あとは院長の同調圧力に屈してしまいました。

これだけのメンバーが集まれば、切断するという医師の決断に対して異議を唱える人ももっと出そうですが、内野以外は反対意見はまったくでません。

やはり院長という立場の強いものに対しては逆らえないという無言の圧力が、正常な判断を誤らせる結果になったと思われます。

患者にとって本当のケアとは?

医師にとって患者への本当のケアは、いくつもの選択肢から患者にえらんでもらう、いわゆるインフォームド・コンセント(説明と同意)が必要です。

医師は自分がこうした方がいいと思っていても、患者の不安があれば決して押し付ける行為をするべきではありません。

漆原医師はAケアにおいては、医師の切断すれば身が軽くなる、家族の介護負担が減るといったメリットばかりを強調し、治療を押し付けたためにこのような悲劇が起こってしまいました。

物語の中では、漆原院長の思想を本にしてAケアを世間に認知してもらおうという動きがありましたが、もし出ていたら大変な騒動になりましたね。

そういう話の展開もおもしろいなとは思いましたが・・

以下では「廃用身」の物語の紹介をしていきます。

廃用身紹介 ネタバレ含む

では廃用身を紹介します。

これは異人坂クリニックの漆原院長の提唱によるAケア(廃用の手足を切断する)という治療の物語です。

漆原院長の考えでは、脳梗塞などで麻痺した患者は手足を切断すれば、身も心も軽くなりますとか、体重が減った分介護が楽になりますという触れ込みでこの治療を推奨していました。

異人坂クリニックの岩上武一(六平直政)は脳梗塞になり、両足が不自由になり、また左腕も利かない状況になっています。

当然車椅子生活です。

しかし岩上は普通の生活に戻れることを信じて、懸命にリハビリを実施していました。

岩上が自宅に戻るときは、自宅前に大きな石段があり、大人が数人ががりで持ち上げて運びます。

岩上も迷惑をかけていることに非常に負い目を感じているようでした。

そして寝たきりであるため、自由の利かない足や腕の重みによって、背中には大きな褥瘡ができてしまいました。

家に戻っても、妻は面倒をみてくれず、息子からは虐待をされたり、無視されたりでひどい扱いを受けます。

ある日、異人坂クリニックの漆原院長から、岩上にAケアを提案されます。

つまり両足切断と左腕の切断です。

これをすれば「身も心も軽くなる」、「身体が軽くなって褥瘡も消える」、「介護の負担が減る」といいことばかりを述べて説得します。

岩上はついに了承して切断します。

しかし、切断して得たものは醜くなった体と、家族からの変わらない仕打ちでした。

池上は耐えきれなくなり、息子と妻をナイフで殺害し、自らも命を絶ってしまいました。

また他の患者にも自殺者がでてしましました。

そして漆原はクリニックの看護師からのリークも相まって、マスコミから大バッシングを受けます。

追い詰められた漆原は線路で自殺してしまいます。

遺書には「頭は自分の廃用身」と残していました。

医師らしい文言ですが、自ら考えたAケアこそが、廃用身だったということを自覚したということでしょうか。

ここで物語が終わりを迎えますが、前述したとおり、このAケアという治療法は患者にとって死へのリスクが高く、決して画期的とは言えないと思います。

まとめ

異人坂クリニックの漆原医師はAケアという治療法、つまり脳梗塞などで麻痺した手足を切断するという、今までにない発想で患者を救おうとしました。

しかし確かに身は軽くなりますが、それ以上にリスクが伴うことを考えると、現代ではとても合理的な治療法ではないと思っています。

皆様はいかがでしょうか

今日はここまでです。ではまた。

 

 

 

 

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